第一部がめちゃくちゃおもしろい。
といっても、発禁騒動などあり、どれほどの真実かは
問われるているので、真実に×75%ぐらいをかけて、読んでみとしても、
彼の青年期後期までの話が秀逸だ(読み物として)。
個人的には、もっとも彼の生に対する衝動の根源にあると感じるのは、
「両親について満足できる答えがどうしても見つからず情緒不安定に陥っていたし、精神的な真理を捜し求めていたスティーブに対して禅宗がそれなりに満足のできる答えを与えてくれたのだ。」(上p.55)
結婚式も禅宗の僧が取り仕切ったほど彼にとって禅は大きいのだ。
NYなどの本屋に行けば"ZEN"というコーナーがあり、
ファッションのようにも思えたが、彼にとってはそうではなさそうだ。
里親に育ち、生みの親を探し、自分がなぜ生まれてきたのか、
そんな悩みを抱えながら青年期はアイデンティティを模索していただろうに。
僕には、iPodの機能美がそのような葛藤や苦しみの果てに見える。
「周囲の期待、プライド、恥や失敗への恐れ――こうしたものは全てわれわれが死んだ瞬間に、さっぱり消え去ってしまう。最後に残るのは本当に大事なことだけだ。自分もいつかは死ぬんだと考えることは、失うことの怖さという落とし穴にハマらないもっとも効果的な方法だ。君達はすでに素っ裸だ。意に反して生きる理由なんてどこにもない」(下p.117)「お前がやりたいのは、本当にこんなことなのか?」(下p.66)
生き死に、生命を語り、人生の本質を語る彼を見ると、
起業家、経営者、デザイナーというような職業的名詞ではなく、
ただただ≪一人の男≫として魅力的なのだ。
さて、よく分からなかったのは、
「孤独を好み、自己陶酔型で、他人と接点を持たず、交友範囲は狭く、運動が苦手だった」(p.31)
らしいが、どうしてそんな偏屈で閉じこもった人が、奇才になり、カリスマ性を持ったり、
リーダーシップをとったり、組織を動かしたりできるのだろうか、と思う。
それは、社交的で、人付き合いがよく、人望があることこそが、リーダーにふさわしい
なんていうことが誤解だったのだろうか、と自問する。
孤独が好きだろうと、自分の世界に浸ろうと、チームの統率は関係ないし、
リーダーシップはもっと別のパーソナリティに関係している、ということなのだろうか。
以上、スティーブ・ジョブズに興味がある人必読の書と思います。
他方で、下記の書は、写真と少しの文章で上記書要約版といった感じです。
ジェフリー・S・ヤング・ウィリアム・L・サイモン『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』(東洋経済新報社, 2005)
林 信行『スティーブ・ジョブズ 偉大なるクリエイティブ・ディレクターの軌跡』(アスキー, 2007)
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