2008年6月5日木曜日

21冊目 内田 樹『私家版・ユダヤ文化論』(文藝春秋, 2006)

周知の事実のように語られることが多いが、

世界はユダヤ人が支配している、という言説を聞く。

例をあげてみよう。驚くべきことに、

1901年~2005年までのノーベル賞受賞者のうち

医学生理学賞 26%
物理学賞   25%
化学賞    18%

ユダヤ人が世界人口の0.2%しか占めないことを

考えれば、「異常」なほどだ。実業界も同様に

しっている名前やブランド、企業名が並ぶ。




ユダヤ人がどういう民族か、

小林秀雄賞がその賞を与えた本によって、

逆説的にどのような賞かが浮き彫りにされるように、

非ユダヤ人のありようが、ユダヤ人をユダヤ人

たらしめている、そのような考察が本書の最初の印象だ。



読みやすい本だ、とはまったく思わないが、(そのために

私家版とついているようなものだが)、その考察を二度三度

と読んで見たくなる本である。

本書は、2007年小林秀雄賞受賞作品である。

内田 樹『私家版・ユダヤ文化論』(文藝春秋, 2006)


余談だが、

非常に興味深かったのは、

「キリスト教徒は利息をつけて金を貸してはならないという宗教的制約が課せられていた」(p.45)「実際には近世資本主義の勃興とともに金利は合法化されている」(p.58)

イスラム金融に金利がないというようなことを

最近きいたことがあり、また、ドバイのバブル景気について

NHKのマネーの潮流という特集が組まれいたこともあったが、

なるほど、前近代において金利はそもそも禁じられていたのか!

しかし、イスラム金融に思うことの一つは、投資はそれに当たらない

というようなロジックであるが、確かに投資と融資は経済学的には

別物と理解できる。しかし、利子の金利が不労所得という意味であれば

宗教的に禁止した、投資と融資の区分は怪しくなるのではないか、と思う。

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