2008年11月28日金曜日

37~ 42冊目 日本論の名著

以前、テレビで紹介されていた日本論の著書をブログに書き写しました。
以下、全て引用・抜粋です。



1冊目は「逝きし世の面影」(葦書房・渡辺京二著)。これは江戸時代末期から明治初期に日本を訪れた外国人が記した庶民の実像を、丁寧にひろい上げまとめたものです。出版当初は各界の著名人が思わず涙を流したとの逸話もあり話題となりました。異邦人の目を通して知る文明開化以前「絵のように素朴で美しい日本」と出会える1冊です。 この本には2点の重要な意味があります。第一は、当時の日本が世界に現存する唯一の天国と思われていたこと。第二は、驚くべきことですが、当時の外国から来た知識人が日本の将来を見通していたことです。 日本は欧米から導入した技術、文化、制度などにより近代化に成功し、米国に次ぐ経済大国になりました。しかし、失ったものも多大で、それを確認することも大事であることを教えてくれる名著です。ただ、残念なことにこの本は在庫がなくなってしまい、現在は手に入りません。図書館で借りてでも読んで欲しいお勧めの本です。



次にご紹介するのは「大日本 The Britain of East」(実業之日本社・ヘンリーダイアー著)。今から100年ほど前に出版されえた本です。ダイアーは24歳の若さで来日、東京大学工学部の前身、工部大学校の初代都検(校長)に就任、10年間に渡り日本の近代化に多大な功績を残したスコットランド人です。 帰国後、20年の歳月をかけて「東洋の小国が、開国後わずか30年で近代科学技術の習得と社会近代化を達成した原動力は何か」という主題を通し、日本の歴史と社会を紹介したものです。ダイアーがいなければ、現在の「技術大国日本」は生まれなかったとも言われています。副題(東洋の英国)からも分かるように、日本を高く評価していて、日本が欧米の科学、工業、商業を導入しようと決意したとき、日本人を行動に駆り立てた動機として新渡戸稲造氏の「武士道」の文章を引用し解説しています。 原著が出版された1904年は日露戦争の宣戦布告がなされた年でした。この時こそ、日本が近代国家を完成させ方向転換した時です。この本は「失われた15年」に直面している今の日本人が、どこに原因があるかを知るための大量の示唆が含まれています。ダイアーは武士道精神を失ってしまったということが原因という事を訴えたかったのかもしれませんね。

 

1970年代中頃から、日本は急速な発展を遂げました。この現象の解明や原因の究明について、1980年頃から多数の本が出版されました。その中の1冊「日本/権力構造の謎」(早川書房・カレル・ヴァン・ウォルフレン著)をご紹介します。 ウォルフレンはオランダ生まれ。ジャーナリストとして日本に来日、この本を89年に出版し、国際的ベストセラーになりました。この本では、日本の急激な成長が「ジャパン・プロブレム」といわれる世界全体の問題になっており、その問題の本質と成長の原因を探ることから始めています。その問題の原因は西欧社会と日本の意思疎通が悪く、誤解を生んでいる点で、日本特有の「ザ・システム」というべき構造に本当の権力が存在していると指摘しています。 また、日本人がわかっていても書かない分析が豊富であるため、日本からは様々な反論が出されました。日本は「ジャパン・バッシング」「ジャパン・パッシング」「ジャパン・ナッシング」といわれ、その過程で省庁再編、地方分権などを実施してきましたが、その成果は明瞭ではありません。もう一度、ここに書かれた分析を見直して、改革を検討すべきです。



昨日までは西洋の視点で書いた日本の名著でした。視点が変わると全く違う発想の一文も出てくる、ということで日本とも歴史的にも古くから交流を持つ国の方が書いたこの1冊「縮み志向の日本人」(学生社・李御寧著)をご紹介します。 ソウル大学大学院碩士であり韓国の初代文化相も経験した著者は、日本に住んでいたこともあり、日本の良い面、悪い面も理解し、日本人が常に小さいものを求め、小さいものへ向かう傾向を「縮み」志向と説明しています。言語、風俗、文化などが酷似した韓国の眼を通して発見された日本文化の本質をわかりやすく書いた1冊です。 「日本人がはじめて開発し、世界に送り出した商品は扇子であった」などという意外な事実や卓抜な視点で日本文化の本質や日本が工業化社会のトップに躍り出ることができた秘密を明快に分析してあります。また、「拡がり」に弱い日本的特性も指摘、小ささの中に無限の広がりを追求する日本文化を紹介し、エールを送っている元気の出る1冊です。



最後にご紹介するのは「陰翳礼讃」(中公文庫・谷崎潤一郎著)。明治19年(1886年)東京生まれ、昭和40年に生涯を閉じるまで約半世紀に渡り激動の社会清努に流されることなく独自の世界を描き続けました筆者のこの本は建築家などに多大な影響を与えた1冊です。 闇があるからこそ光が美しい。日本独特の文化、家屋構造などが日本人の「美」の意識を形成する、という説をいろいろなものを例に挙げて述べています。谷崎潤一郎氏はもともと西洋に強く影響を受けた人であり、日本文化よりも西洋文化に影響を受けた人として知られていますが、晩年は日本文化に回顧しその深みと美しさに魅せられたのですね。今年は谷崎潤一郎氏の没後40周年ということです。数々の名作を残した谷崎氏の本を手に取ってみる良い機会なのではないでしょうか? 昨今は国の魅力を「Cool」かっこよさで図るという新しい動きも見られます。今週ご紹介した本をきっかけに普段は自国文化を当たり前のものとしてそれほど振り返らない私たちも日本の文化をもう一度省みて、その美しさに気付いて欲しいと思います。

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